(2023年11月:加筆修正いたしました)
「お菓子とともに朝市の楽しみを」
「あいづ朝市」の店頭で「輪投げ」を作り、お客様に楽しんでいただく場づくりに勤しむ「長樹工房」の長谷部亜樹さん。
長谷部さんは、会津大学短期大学部食物栄養学科を卒業後、老人施設で5年間、栄養士として働きながら勉強し、管理栄養士の資格を取得した。
その後は、資格を活かしスキルアップのため病院に勤務しながらも、
「栄養素の知識はあるが、そもそも食材ってどうやってつくられているの?」
「食材がつくられる現場のこと、実は何も知らない」
と気づき、次第に興味が食材生産へと移っていった。
行動派の長谷部さんは、農業法人に転職。
農作物を育てることの”やりがい”や野菜の”魅力”に惹かれ、仕事をしていると、
「少しの虫食い、傷で、なぜ市場価値がなくなってしまうの?」
「重労働なのに、なんでこんなに賃金が低いの?」
「野菜って、安すぎない?」
と、やりきれない想いを抱くようになった。
そんなある日、勤務していた農業法人が倒産する憂き目に遭う。
「実は、途方に暮れた・・」と長谷部さんは話す。
「価値がないと捨てられるものに、何か価値を付けられないだろうか」
「廃棄される食材を減らし、生産者の収入につなげることはできないだろうか」
と、想いはだんだんとかわってゆく。
あるとき、暮らしていたアパートからの引越し先を探していたら、台所が2つある珍しい物件に巡り合う。
「ここだ!」
「ここならば、私の想いを食品加工で実現できる!」
すぐさま、工房設立へと動いた。
まず、保健所から「菓子製造許可」を得るための工房づくりをはじめた。
初期費用にあまり多くのリスクを割くのは怖く、自らの手で塗装をしたりして許可取得を乗り切り、晴れて「長樹工房」開業の日を迎えた。
長樹工房の主力商品は、マフィン。
生地は国産小麦、きび砂糖、米油を使用。
牛乳やヨーグルトは地域のものを使用し、地産地消にも貢献したい。
季節によっては、会津の野菜や果物も使う。
ここまで積み重ねてきた経験から、
「食材本来の持つ素材の味を活かし、邪魔になるような味付けはしない」
「生命や自然に対し、人は無力であることを自覚し、謙虚に食材に向き合う」
素朴な味を持つマフィンは、こんな長谷部さんスタイルの食品加工哲学から生まれた。
クッキーは、季節の行事に合うものをつくっている。
見た目がかわいいだけでなく、味もおいしいと、お客様に喜ばれている。
「地域のいろいろなお店とのコラボ」
の仕事はとても楽しく、いままでと違う付加価値が生まれることも楽しんでいる。
「あいづ朝市」に出店すると、さまざまな素材を生産しているお店の方々に出会う。
お菓子には奥深い可能性があるから、会津の素材を組み合わせ、新しい商品を創作する気持ちが湧いてくる。
「あいづ朝市」を「チャレンジの場」と話す長谷部さんは、つぎつぎと新たな案にも挑戦する。
新たに取り組んだ「プリン」では、卵黄を多く使用するため、余ってしまう卵白を使用するお菓子の派生商品にも挑戦する。
「プリン」で余った卵白を活用して作った「焼きドーナツ」
農業で感じたことと同じように、食材を余らすことのない商品づくりは、考えが一貫しています。
無駄なく使うことは、リーズナブルな商品提供にもつながり、ひいては、朝市を訪れる「子どもたち」も、遊びながら会津の良い食材を使ったものを手にできる。
実にSDGsな行動を自然体で行っています。
お菓子づくりと平行して、野菜の生産も行っています。
農地は使う人がいない土地を借り、20品目以上の野菜を栽培。
「あいづ朝市」で販売したり、自身のお菓子づくりにも役立てています。
今後は、「お菓子づくりに重点を置く時期」と「農作業に集中する時期」を分け、季節のサイクルに応じたタイムマネジメントを実現したいと言います。
旬な素材の良さを楽しんでいただく商品づくりを目指すと、目を輝かせていました。
「長樹工房のお菓子」「長樹工房のお野菜」を、あいづ朝市でぜひお楽しみくださいませ。