「楽しい、おもしろい、人生を送りたい」
西山地区(福島県柳津町)で「ティールーム山ねこ」を営む金子勝之さんは、こう話します。
金子さんは、生まれ育った西山で、
「目の前に見えるものを映像として残せる”写真”」
に、大きな衝撃を受けた少年時代を過ごした。
「文章」でも「映画」でもなく、自分の記憶以外で”残せる”ものを、”自分の手で”実現できる「写真」に、大きな可能性を感じたのだ。
写真技術を身につけ、西山で写真店をひらき30年。
建設会社で必要とされた「現場写真」の仕事を中心に、地域の人々に支えられながら仕事をしてきた。
現像の待ち時間にお茶を淹れ会話をしたり、依頼者が仕事をできるリモートオフィスのような場所を設けたりと、「ティールーム」の前身は、この頃から少しづつ芽生えていた。
暮らしのためにオカネを稼ぐ仕事の他に、金子さんが大好きな「おしゃべり」を通じ、「楽しい時間」「おもしろい時間」を持つことが、仕事の潤滑油として大事なものとなっていった。
時代が移り行くなかで、
「カネを稼ぐことに集中するよりも、この土地で楽しく生きられることをやろう!」
と大転換したのは2010年。
東日本大震災の前の年だ。
写真店を閉店し「百姓」へと舵を切る。
かねてから関心を抱いていた琉球大学の比嘉照夫教授が提唱するEM菌の講演会を、須賀川市で聴いたとき、
「これだ!」
と気づきを得たという。
「農薬を使わずに、微生物の働きで害虫も防ぐ」
この循環農法の方法で、
「子どもの頃から食べている西山のおいしい野菜を、自分の手で作ってみよう」
という気持ちを持ち続けていたのだ。
本を読み独学する日々。
のちに、福島県有機農業ネットワークに入会し、勉強を重ね行動を起こした。
実は用意周到に「百姓」への道をめざしていたのだ。
「自分の作ったものを食べ、みんなの細胞がよろこぶ顔がみたい」
顔の見える関係を持つ方々に向けて考えたのが、最初はカレーの販売だった。
和歌山カレー事件(1998年)が尾を引き、地域イベントでカレーを提供することがタブー化された社会で、おそるおそるカレーをイベント出店した。
「カレー」を待っていた地域の人々から熱烈な支持を受け、「転換してよかった」と実感を得る。
しかし、カレーの主たる材料である「スパイス」が、自分の生産物ではないことに引っ掛かる気持ちを抱きはじめる。
「山のなかにある食材で、みんなが喜ぶ何かを作れないだろうか」
西山地区でも生活様式の変化により、山の恵みとして古くから伝わる「わらびの塩漬け」を食べきれずに春を迎える家が多いことに着想し、これを活用して「わらび」に「キムチ」を混ぜ「ピザ」にのせてみた。
同じように、少年時代に毎日のように食べていた「原木しいたけ」と「ベーコン」をのせてみたり、地域の特産品の「赤かぼちゃ」や「ブルーベリー」をのせ、「ピザ」を作ってみた。
ユニークな具材による「ピザ」は、どれも地域の食材が主たる材料で、心のわだかまりが解けていった。
「あいづ朝市」には、これらのピザがお目見えする。
同時に営む農泊においでになるお客さんからは、西山の水や野菜を食べると、自然の恵みを最大限感じ、
「細胞がさわぐ」
という言葉をよく聞く。
西山の畑や山からとれる産物を用い、気持ちにもカラダにも喜びが染み渡る食べものを提供する「しあわせ」に、あらためて喜びを感じている。
そんな金子さんは、
「よろこびの顔を写真に撮りたい」
と、次なる抱負を口にする。
循環した「農」を目指し、自身のやりたいことも循環してゆく。
「出会った土地」「出会ったひとびと」の恵みを受け、土地と人々にも恵みを授ける。
「おしゃべり大歓迎」の金子さん。
山の達人に会いに「あいづ朝市」や「お店」をたずねてみよう。
お気軽な気持ちでおいでくださいませ。
ティールーム山ねこ 農泊 山ねこ |
福島県河沼郡柳津町大字砂子原267 |
電話 090-7565-9308 |