笑空

「毎日、笑顔で空みてピース!」

喜多方市高郷町で農業「笑空(えそら)」を営む勝沼祐馬さんは、秋晴れの空のもと、にこやかな笑顔で取材に応じてくれた。

環境問題のバイブルと言われるレイチェル・カーソンの『沈黙の春』が発表されたのは1962年。

1969年に「地球環境を考える日」という概念が提起され、日本では1990年からはじまった「Earth day」。

東京で暮らしていた勝沼さんは、20代の頃はじめてこの運動に触れ、そこには、

「むかしながらの生活スタイル」

「東京にはない『ものづくり』」

「もちろん、環境にやさしいかたちで」

という暮らしを目指す人々の姿があった。

そんな暮らしにあこがれ、世界で自然に沿った「ものづくり」がされていることを知るための旅に出る。

ニュージーランドでは、パーマネント(永続性)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)からなる「パーマカルチャー」に出会う。

人と自然が共存する社会をつくるために、どうやって暮らしをデザインするかを考える人々に直接触れた。

インドでは、日本人が味噌汁を飲むように毎日食べるカレーに興味を持つ。

勝沼さんが育てている「ハバネロ」

ひとびとが毎日の食を楽しむカレーは、「カレー味のおかず」と言ってよいほど、自然のめぐみであるさまざまな野菜やスパイスがカラフルに彩られている。

街角の屋台で、気軽に食べられる食文化に、感心が釘付け。

「人と自然が近い距離にある暮らし」が、勝沼青年の生きる中心へと成長していった。


おじいさん・おばあさんが福島で暮らし、親近感を感じていたことから、旅から戻った勝沼さんは、裏磐梯のスキー場でアルバイトをしつつ、新しい暮らしを探る。

地域の求人チラシに農業実習生の募集が載っていることを寮の管理人さんから聴き、農業を学ぼうと応募した。

応募の3日後に、東日本大震災が起き、一時はどうなることかと思った。

しかし、予定通りに喜多方市高郷町の農家に受入れていただき、農業を学びはじめる。

「きゅうり」の生産現場では、流通に必要な規定のきゅうりの長さ(大きさ)になったものを、毎日朝晩の2回収穫し出荷する。

自然に大きくなったり、熟したりするのを待つのではなく、人の都合で採取する。

「なんだか違うな」

と感じ、自分のスタイルを模索。

「無農薬で保存がきく作物なら、自然に合わせ、人が食べたいときに食べられる」

「もっと地球にやさしい農業を」

という方向へと意識が向かっていく。


パプリカやカボチャ、ニンニクなど、保存がきき、あまり手のかからない野菜を作り始める。

カレーのスパイスとなる、クミン、フェンネル、コリアンダー、パクチィも手掛けた。

自ら生産した野菜やスパイスを使い、キッチンカーを用い各地のイベントでカレーの販売もした。

いま畑では、トゥルシー、トウガラシ、トマトなどが栽培されている。

トゥルシーは乾燥させ「お茶」に、トマトは青トマトのピクルスなどと、「自然のまま」もしくは「加工を施し」保存のきく形にして世の中に提供する。

今後は、現在は休止しているキッチンカーによる販売をグレードアップし、固定店舗での販売や飲食店の運営などの夢を持ち、今後の展開が楽しみな若き有機農業家だ。

近頃は、 トゥルシーのお茶を中心に販売。

「トゥルシー」の花

インドでは葉をチャイ(茶)に、勝沼さんは花をお茶にする。

夏場は、生のまま水出しにするとおいしいという。

ピンク色のきれいなお茶の色は、目も楽しませてくれる。

他の店舗にはない商品が並び、異彩を放すブースに驚き示す方々の姿が毎回見受けられるユニークな店。

会津で生産されるユニークな食材を、ぜひお楽しみくださいませ。