「しっかりと手間をかけたワインをつくりたい」
と話す橋本竜太郎さん。
橋本さんは、奥さんの愛子さんとともに、会津美里町で「ぶどう」と「なし」を栽培をする果樹農家を営む。
かつて、八ヶ岳の山小屋で働いていたころ、「食」と「自然」をこよなく愛す多くの仲間に出会う。
愛子さんもその一人だ。
山小屋に通いながら、ふもとで「農」を営む暮らしをする同僚に魅せられ、
「こんな素敵な暮らしをしたい」
と、会津若松市出身の竜太郎さんは、愛子さんとともに会津に新天地を求め、移り住んだ。
「農」を勉強しながら暮らす場として、会津美里町が募集していた「地域おこし協力隊」に応募し、「ワインづくり」を始めたのが、橋本農園の原点。
ワイナリーの立ち上げに向けた3年間の協力隊活動を通じ、「ぶどう栽培」と「ワイン造り」の技術を習得してきた。
その後「橋本農園」として、自立した運営を始める。
橋本さんのモットーは、「農業と真摯に向き合うこと」。
手入れをするぶどう棚は、枝がきれいに一方向に揃えられ、ぶどうの実もきれいに整列している。
ワインは、一切の混ぜ物をせず”100%”ぶどうが原料となる。
「美味しいワインは畑から」
と、日々の仕事に取り組む。
ゆくゆくは、自分たちが育てたぶどうでワインの自家醸造をしたい夢を持つ橋本さん。
日本でワイナリーを開設するには、年間6キロリットル(720ml瓶で8300本余り)以上の生産をすることが最低基準となっている。
この量を満たすためには、3万房ものぶどうが必要となる。
夫婦でワインの原料すべてを自家栽培するには、難しい量だ。
「ワイン特区」に指定されれば、2キロリットル以上に条件緩和されることから、この指定を受けられるよう、行政に働きかけをしている。
今シーズン栽培しているぶどうは、ワインぶどう栽培や醸造に対しての取り組み方に深く共感できたワイナリーに醸造を委託し、そこでは醸造作業にも携わる。
栽培から醸造までの「ていねいな仕事」は、このような形で実現させている。
出来上がったワインは、橋本農園のオンラインショップで、直販が行われている。
ワインを「あいづ朝市」でイベント販売するには、法律上の問題をクリアしなければならない。
近々、「あいづ朝市」でワインを販売できるよう、準備が進む。
そのほか、生食用の「ぶどう」や「なし」にも取り組む。
日々の畑の様子から、だんだんと信頼していただけるようになり、
「農地を引き継いでほしい」
と、高齢化した農家の方々からのお話をいただくことも多い。
新たに「ぶどう」を植えたり、「なし棚」をそのまま引き継いだりと、ワイン向けぶどうの他にも果樹を栽培する複合経営も試している。
ぶどうの”ふくしまブランド”「あづましずく」や、人気の「シャインマスカット」など、新しい品種にも積極的に取り組む。
今後、会津で果樹農家に新規就農をしたい方のモデルとなるよう、さらに頑張りたいと話す竜太郎さん。
近頃の会津には、耕作放棄された農地が多く見受けられるようになってきた。
寒暖差の大きい盆地の特性から、ぶどう栽培に向いている会津の気候。
この長所を活かし、暮らしに潤いを与える「ものづくり」の道筋を示したい。
「本当に素敵な暮らし」
に挑戦する新規就農者の今後に注目だ。